校長室だより

校長の呟き ~東の空から~

69.佐藤 厚志 先輩 おめでとうございます。 ~第168回芥川賞受賞~

 先週は直木賞と芥川賞の受賞者発表がおこなわれました。芥川賞は仙台市出身の佐藤厚志さんが受賞しました。実は,発表の19日の時点で本校英語科11回生だったことは承知していましたが,本人の了解も得ていませんでしたので,公表は差し控えていました。20日朝はやく,同窓会の光井会長さんから連絡をいただき,なんとかご本人に公表の許可を得たいことをお話しし,光井会長さんが校長室に来てくださり,内諾を得たのがお昼前だったでしょうか。報道からの取材を待っていましたが,残念ながら特にありませんでした。

 2017年第49回新潮新人賞,2020年第3回仙台短編文学賞大賞を受賞し,2021年第34回三島由紀夫賞の候補にまでなっておりましたので,今回の受賞は受賞候補の段階から注目されていました。受賞作品「荒地の家族」は宮城に住む植木職人を描いた作品で,震災から10年以上経過した被災地宮城出身の佐藤さんの力作だそうです。書店にいっても売り切れでしたので,なんとか手配して受賞作品を読んでみたいと思います。栄えある受賞の喜びを,東高生,職員,PTAや同窓会等関係者の皆様と分かち合いたいと思います。本当におめでとうございました。

令和5年1月23日 山内

68.共通テスト終了 ~これからが本番 一年で最も寒い時期~

 大学入試共通テストが終了しました。昨年は数学IAが過去最低点の平均37点台で,社会的にも大きな反響を呼びました。バスケットのシュートの軌道に関する出題があった今年の問題は,昨年があまりにも難しかっただけに,だいぶ易化したようです。逆に昨年比較的簡単だった教科・科目は厳しめになりました。毎年その繰り返しのようです。1・2年生も是非チャレンジしてみましょう。

 

 東高130名ほどの3年生も14日・15日の二日間,東北大や学院大等複数の会場にわかれて共通テストと戦ってきました。報告では大きなトラブル等はなかったようですので,少しほっとしています。今日は国文室に集まり自己採点日です。今週末のデータ返却を待ちつつも,2次試験や私大受験に向けて新たなスタートを切ったことと思います。ご家族や担任の先生との面談もありますね。これからが本番です。粘り強く取り組んでください。今週は高校入試の予備調査結果もでるはずです。受験のハイシーズンですね。

 

 阪神淡路の大震災からはやいもので,明日で28年だそうです。あの日も寒い・寒い日でした。暦の上では今が一年で最も寒い時期,授業中の様子を見に廊下を歩くと寒さを実感します。グラウンドのサッカーの授業は本当に寒いですね。今週末20日(金)は大寒です。コロナ以外でも,インフルエンザ流行の報道もあります。3年生は東高で受ける授業日は2週間を切りました。1年生も2年生も寒さ対策をしっかりして一日一日を大事にしましょう。

令和5年1月16日 山内

67.開講式校長講話 ~物事には続きがある 限界を作らずに挑戦~

 新春恒例の箱根駅伝は高い視聴率でしたので,テレビで見た皆さんも多いかと思います。優勝したのは駒澤大学で,出雲・全日本と合わせ,史上5校目の三冠を達成しました。選手たちはとても謙虚で,相手校をリスペクトしていて,体調不良の主力選手を欠いてもあきらめずに控え選手がカバーしての優勝は,三冠に相応しいチームだと思いました。優勝した駒澤の大八木監督は福島の出身で,独特の東北訛りは親しみを感じます。今回の優勝は,還暦を過ぎても自分自身に限界を作らずに,自分自身と何より選手の可能性を信じ,粘り強く取り組んだ結果だと言われています。学生には我が子の様に親身になって接し,厳しさの中にも愛情が溢れる素晴らしい指導者だと思います。監督業は今年3月で勇退されるようですが,今後は機会があれば,さらに他校や社会人の選手も教えて世界を目指すそうです。

 

さて今年の干支は卯,つまりうさぎです。今日は有名なイソップ童話の「うさぎとかめ」の話から。先ほどの箱根駅伝ではありませんが,駆けっこで亀と競走することになったうさぎは,自分の足の速さにうぬぼれ,亀の足の遅さを馬鹿にして居眠りをしている間に亀に追い抜かれてしまうという物語。しかしこの物語には続きがあり,今から50年ほど前に日本人の童話作家によって改良されました。

 

 競走に負け,ふるさとを追われたうさぎは,ある日ふるさとにいる子うさぎがオオカミに狙われていることを知ります。なんとか名誉挽回しようと,オオカミを呼び出し,少々ずるい手を使ってオオカミを退治し,英雄としてふるさとに戻りました。一方,なんでもできると自信過剰になった亀は,空をも飛べると思い,ワシに頼んで空高く連れていってもらい,自力で空を飛ぼうとしたが,その後亀の姿は見えなくなった。というものです。

 

 別の続編もあります。もう一度正々堂々と駆けっこの勝負をして,今度はうさぎが勝った。しかし負けた亀は満足して笑みを浮かべていたので,うさぎが理由を聞くと,「勝負には負けたけれども,自分のタイムがこの間よりも上がったから」と答えた。というストーリのものもあります。これらのストーリを既に知っている東高生や先生方がいるかも知れませんし,さらに違った続編を読んだことがある人もいるかもしれません。可能性は無限です。

 

 誰もが「これで終わり」と思っていて,自分自身でも「限界」と思っていても,実はまだまだ可能性はあるものです。あきらめないで粘り強く挑戦すれば皆さん一人一人に備わっている無限の可能性は必ず花開くものです。

 

 日本のことわざで有名な

 「井の中の蛙大海を知らず」の続きは,「されど空の青さを知る」

「柔よく剛を制す」の続きは,「剛よく柔を断つ」

学問のすすめ

 「天は人の上に人を造らず」の続きは,「人の下に人を造らずといへり」

 

 札幌農学校クラーク博士

 英語で有名な「Boys, be ambitious」の続きは,「like this old man」となります。

あげればきりがありません。

もうひとつ

 「桃・栗3年柿8年」の続きは,「梅は13年,ゆずと梨は18年」となります。

 

 日々の勉強でも,限界を作らずに,もっと先に知らないことがある,もっと詳しく知りたいと思って挑戦してみてください。皆さんの可能性が花開く一年であることを祈念します。

 令和5年1月10日 山内

66.終業式講話 ~日本人の国民性~

 サッカーW杯はアルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じましたが,W杯中,清掃等整理整頓や関係者への感謝を欠かさない日本代表チームやサポーターのたちの振る舞いは世界から賞賛されています。日本の国民性自体が評価されているのかもしれません。では今日はその日本の国民性に係る「少し前の2019年,大分前の2011年,大昔の103年前の1920年」の話をします。

 

 100年ほど前,「スペイン風邪」というウイルスが世界的に大流行しました。全世界で5000万人もの死者を出し,日本でも人口の0.8%にあたる45万人が亡くなりました。予防策としては,マスクをつける,密を避ける等今と変わらない対策をしていました。終息までに2年ほどかかりましたが,のちのちこれは免疫抗体を獲得できたからだと言われました。ワクチン等効果的な医学治療法もない中で,他国と比較して被害が少なかったのは,医療従事者の献身とマスク手洗い等を徹底した日本人の国民性によるものだと言われています。努力は無駄ではなかったということです。なお,スペイン風邪の発祥はアメリカであって,スペインではありません。当時は世界大戦中で中立国のスペインがこのウイルスについて世界に発信したからです。

 

 3年前,中国武漢で「covid-19」(2019年に発生した新型コロナウイルスの略)が発生しました。国名や地名を使わなかったのは偏見や誤解を避けるためです。この新型ウイルスは皆さんご存じのとおり,12月15日時点で,全世界で感染者は6億5千万人を超え,665万人もの命を奪い,日本でも約2千百万人以上が感染し,5万2千人を超える方が亡くなられています。世界的に見れば,スペイン風邪同様,日本人の感染者・死亡者の数は少ない方です。このことは,医療従事者の献身とマスク手洗い等を徹底した国民性によるものだと思います。報道では現在は第8波の最中らしいですが,本当に終結が待ち遠しいです。

 

 未曾有の大震災からもうすぐ13年です。宮城県内だけで9千5百人以上の方が亡くなり,未だに千2百名もの方々が行方不明のままです。生きたくとも生きられなかった多くの人々がいたことを私たちは忘れてはなりません。そしてあの大混乱の中でも不自由な生活に耐え,略奪等の犯罪もほとんどなかったという日本人の国民性を誇らしく思うと同時に,海外からは福島宮城岩手には原発事故の影響で足を運ぼうとしない人が多くいて,未だに「偏見・風評被害」が続いていること,大切な人や家を失い,未だに心のケアが必要な方が多くいることも忘れてはなりません。

 

 この冬休み中,703人の生徒,68人の職員全員無事に元気でいることを願います。不要不急の外出を避け,感染予防を徹底してください。しかし,次々と変異を繰り返す新型コロナウイルスの猛威は衰えを知りません。本校でも多くの職員や生徒が感染しました。人口10万人あたりの感染率は全国トップであり,今後宮城県内ではいつ感染しても不思議ではない状況です。もしそうなった時でも,感染した人への誹謗中傷は絶対に行わないでください。私は東高にはそのような人はいないと信じています。悪いのはその人ではなく,ウイルスなのです。

 

 今日も話しを聞いてくれてありがとうございました。これで講話を終わります。皆さん良いお年をお迎えください。では,お互い元気に1月10日(火)にお会いしましょう。

令和4年12月23日 山内

65.個人戦か団体戦か ~「受験は個人・団体のどちらか? 今年の漢字は「戦」~

 2年生も戻り,「チーム東高」の3学年が揃いました。関係者の皆様に感謝いたします。埼玉スーパーアリーナで行われたマーチング全国大会では東高吹奏楽部が,宮城県・東北地区代表として堂々の演奏・演技を行い,銅賞を受賞しました。こちらも関係者の皆様に感謝いたします。冬期課外はあるものの,23日の閉講式まで今年の授業もあと十日です。

 

日本が敗れ,サッカー熱も冷めてきましたが,W杯は今週いよいよ準決・決勝が行われます。攻守にチーム全員が走り回るサッカーのモロッコがアフリカ勢初の4強進出で世界的に盛り上がっています。チーム東高も師走ですので今週は先生方が職員会議・成績会議・推薦会議等で走り回ります。東高も日本代表もクロアチア代表もフランス代表もアルゼンチン代表も「チーム」つまり団体戦です。

 

 1月の共通テストまでちょうど1ヶ月,東高からも3年生のおよそ6割の生徒が受験しますので,これからが進路の佳境に入ります。「受験は団体戦」と皆さんもどこかで聞いたこと,言われたことがあると思います。

3年生ですでに就職や進学を決めた皆さんの受験当日は「個人で」戦ってきたことと思います。ではどうして「受験は団体戦」そう呼ばれるのか。

 

思い返してみてください。確かに受験当日は孤独と戦いながら,一人で受験してきたと思います。しかし,その当日にいたるまでの過程です。励まし合った仲間がいたはずです。支えてくれた家族の存在が大きかったと思います。そして最後の最後まで書類作成から論文・面接等の指導をしてくれた担任をはじめとする師の存在がなくてはならなかったと思います。受験自体は個人戦ですが,受験に至るまでの過程は仲間たちと共に戦う団体戦的な色が濃いのだと思われます。3年生には,いや1・2年生にも「授業や受験勉強は団体戦」という気概を持ち続けてほしいものです。いつものしつこい繰り返しになりますが,結果と同じくらいに,いやそれ以上にその過程が大事なのです。

 

 さて,先ほど今年の漢字は「戦」に決まりました。応募総数約22万票のうち,戦は1万800票もの得票を集めました。2位は安で3位は楽だそうです。欧州のみならず,我が国を含むアジアでも「戦」を意識するような一年だったということです。来年こそは平和な一年であってほしいものです。

令和4年12月12日 山内