校長室だより

校長の呟き ~東の空から~

66.終業式講話 ~日本人の国民性~

 サッカーW杯はアルゼンチンの36年ぶりの優勝で幕を閉じましたが,W杯中,清掃等整理整頓や関係者への感謝を欠かさない日本代表チームやサポーターのたちの振る舞いは世界から賞賛されています。日本の国民性自体が評価されているのかもしれません。では今日はその日本の国民性に係る「少し前の2019年,大分前の2011年,大昔の103年前の1920年」の話をします。

 

 100年ほど前,「スペイン風邪」というウイルスが世界的に大流行しました。全世界で5000万人もの死者を出し,日本でも人口の0.8%にあたる45万人が亡くなりました。予防策としては,マスクをつける,密を避ける等今と変わらない対策をしていました。終息までに2年ほどかかりましたが,のちのちこれは免疫抗体を獲得できたからだと言われました。ワクチン等効果的な医学治療法もない中で,他国と比較して被害が少なかったのは,医療従事者の献身とマスク手洗い等を徹底した日本人の国民性によるものだと言われています。努力は無駄ではなかったということです。なお,スペイン風邪の発祥はアメリカであって,スペインではありません。当時は世界大戦中で中立国のスペインがこのウイルスについて世界に発信したからです。

 

 3年前,中国武漢で「covid-19」(2019年に発生した新型コロナウイルスの略)が発生しました。国名や地名を使わなかったのは偏見や誤解を避けるためです。この新型ウイルスは皆さんご存じのとおり,12月15日時点で,全世界で感染者は6億5千万人を超え,665万人もの命を奪い,日本でも約2千百万人以上が感染し,5万2千人を超える方が亡くなられています。世界的に見れば,スペイン風邪同様,日本人の感染者・死亡者の数は少ない方です。このことは,医療従事者の献身とマスク手洗い等を徹底した国民性によるものだと思います。報道では現在は第8波の最中らしいですが,本当に終結が待ち遠しいです。

 

 未曾有の大震災からもうすぐ13年です。宮城県内だけで9千5百人以上の方が亡くなり,未だに千2百名もの方々が行方不明のままです。生きたくとも生きられなかった多くの人々がいたことを私たちは忘れてはなりません。そしてあの大混乱の中でも不自由な生活に耐え,略奪等の犯罪もほとんどなかったという日本人の国民性を誇らしく思うと同時に,海外からは福島宮城岩手には原発事故の影響で足を運ぼうとしない人が多くいて,未だに「偏見・風評被害」が続いていること,大切な人や家を失い,未だに心のケアが必要な方が多くいることも忘れてはなりません。

 

 この冬休み中,703人の生徒,68人の職員全員無事に元気でいることを願います。不要不急の外出を避け,感染予防を徹底してください。しかし,次々と変異を繰り返す新型コロナウイルスの猛威は衰えを知りません。本校でも多くの職員や生徒が感染しました。人口10万人あたりの感染率は全国トップであり,今後宮城県内ではいつ感染しても不思議ではない状況です。もしそうなった時でも,感染した人への誹謗中傷は絶対に行わないでください。私は東高にはそのような人はいないと信じています。悪いのはその人ではなく,ウイルスなのです。

 

 今日も話しを聞いてくれてありがとうございました。これで講話を終わります。皆さん良いお年をお迎えください。では,お互い元気に1月10日(火)にお会いしましょう。

令和4年12月23日 山内

65.個人戦か団体戦か ~「受験は個人・団体のどちらか? 今年の漢字は「戦」~

 2年生も戻り,「チーム東高」の3学年が揃いました。関係者の皆様に感謝いたします。埼玉スーパーアリーナで行われたマーチング全国大会では東高吹奏楽部が,宮城県・東北地区代表として堂々の演奏・演技を行い,銅賞を受賞しました。こちらも関係者の皆様に感謝いたします。冬期課外はあるものの,23日の閉講式まで今年の授業もあと十日です。

 

日本が敗れ,サッカー熱も冷めてきましたが,W杯は今週いよいよ準決・決勝が行われます。攻守にチーム全員が走り回るサッカーのモロッコがアフリカ勢初の4強進出で世界的に盛り上がっています。チーム東高も師走ですので今週は先生方が職員会議・成績会議・推薦会議等で走り回ります。東高も日本代表もクロアチア代表もフランス代表もアルゼンチン代表も「チーム」つまり団体戦です。

 

 1月の共通テストまでちょうど1ヶ月,東高からも3年生のおよそ6割の生徒が受験しますので,これからが進路の佳境に入ります。「受験は団体戦」と皆さんもどこかで聞いたこと,言われたことがあると思います。

3年生ですでに就職や進学を決めた皆さんの受験当日は「個人で」戦ってきたことと思います。ではどうして「受験は団体戦」そう呼ばれるのか。

 

思い返してみてください。確かに受験当日は孤独と戦いながら,一人で受験してきたと思います。しかし,その当日にいたるまでの過程です。励まし合った仲間がいたはずです。支えてくれた家族の存在が大きかったと思います。そして最後の最後まで書類作成から論文・面接等の指導をしてくれた担任をはじめとする師の存在がなくてはならなかったと思います。受験自体は個人戦ですが,受験に至るまでの過程は仲間たちと共に戦う団体戦的な色が濃いのだと思われます。3年生には,いや1・2年生にも「授業や受験勉強は団体戦」という気概を持ち続けてほしいものです。いつものしつこい繰り返しになりますが,結果と同じくらいに,いやそれ以上にその過程が大事なのです。

 

 さて,先ほど今年の漢字は「戦」に決まりました。応募総数約22万票のうち,戦は1万800票もの得票を集めました。2位は安で3位は楽だそうです。欧州のみならず,我が国を含むアジアでも「戦」を意識するような一年だったということです。来年こそは平和な一年であってほしいものです。

令和4年12月12日 山内

64.師走 ~今年もあと少し 今年の漢字まで一週間 共通テストまで一ヶ月~

 サッカーワールドカップE組で優勝候補世界ランキング7位のスペインに逆転勝ちしこの組1位で,ノックアウトステージに進出した日本は,再び沸きかえっています。今日深夜にクロアチアと目標の8強をかけての戦いですが,それ以上に注目されている日本サポーターたちの振る舞い。勝っても負けてもスタジアムを清掃する姿が世界的に賞賛されています。あと何試合日本代表が試合をするか誰にも予測できませんが,続く限り清掃を行ってほしいものです。ゴミ拾いや清掃と言えば,15年ほど前,初めて県庁に勤めたとき,現場と同じように廊下を掃き掃除していたなら,当時の先輩に「そんなことをする暇があれば,仕事をしろ。第一,君が掃除すれば,清掃専門の方の仕事を奪うことになる。」と言われたことを思い出します。世の中にはよかれと思って行っても様々な見方があるものです。それでも私は掃除を目立たないところで続けました。信念は自分の心が決めます。

 

 さて,先週末に2年生修学旅行隊が無事仙台に戻りました。今のところ,大きな事故等の報告はありませんので,まずは一安心。関係者に心から感謝いたします。本当にお疲れ様でした。落ち着いた頃に思い出や疲労がジワジワと出てくるものです。東高生も先生方も今週は心を落ち着かせて過ごしてください。

 

 もう一つ今日は9日から埼玉大宮会場で行われるマーチング全国大会の壮行式が行われます。コロナの関係で,放送によるものですが,吹奏楽部には,宮城県・東北地区の予選を勝ちぬいての全国大会です。結果を気にしないで,思う存分自分たちの最善を尽くしてきてください。応援しています。

 

 修学旅行中師走の1日に,恒例の今年の新語・流行語大賞が発表されました。大賞は私の呟きのペースにも勝ったヤクルトスワローズの村神様でした。政治経済のこと,ダンスのこと,ファンションや言葉等トップテンには様々な言葉が入りましたが,ここ数年続いたコロナ関連の暗い言葉がなくなったことは光明かもしれません。コロナ禍でも高校生にエールを送った宮城県の高校野球監督の「青春って,すごく密なので」が特別賞受賞というのも,いいニュースですね。東高生の皆さんの今年の新語・流行語はどうでしょうか。

 

 はやいもので,師走も5日です。来週月曜日には「今年の漢字一文字」が発表されます。場所は清水寺。

1組は最終日に2組から6組は初日にそれぞれ修学旅行で訪れた場所です。清水寺の貫主さんが揮毫者としてその年の一文字を書きます。20年は「密」21年は「金」コロナと五輪とイメージできますね。さて今年はどうか。皆さんも一年を振り返って今年の漢字をあげてみてください。

 

 3年生の所謂「推薦入試」結果が届いています。合格の皆さんは,入学後のことを見据えて今まで以上に学習に力を入れるべきです。入学したなら推薦も一般もなんら関係ありません。今後の3ヶ月が進学先での生活を左右します。推薦入試で不合格だった皆さんは,少し立ち直るのに時間を要するかもしれませんが,一日もはやく切り替えて年明けの一般入試に向かうべきです。今回の経験は決して無駄にはなりませんので安心してください。もともと一般入試の皆さんは共通テストまでほぼ一ヶ月です。現役生はこれからまだまだ伸びます。模試の厳しい判定等は気にせず,取組の内容や姿勢を大事にして,最後の最後まで粘ってください。

令和4年12月5日 山内

63. 修学旅行出発 ~思い出に残る修学旅行~

 

 サッカーワールドカップ,日本はコスタリカに敗れ,スペインとドイツが引き分けたため,最終戦までどのチームにもノックアウトステージ進出の可能性があります。日本が敗れ盛り上がりにも陰りが。でも本当に,負けると手のひらを返したり,背を向けたり,遠くに去って行ったりという人間が多いですね。「卑怯」という言葉は死語になりつつありますが,卑怯な戦法の海外勢に対して日本は正々堂々と戦います。もうこの時点で時代遅れなのかもしれませんが,これは日本の品格ですからしょうがないですかね。

 

 さて,今朝2年生が関西に向け無事に仙台を出発しました。私も見送りに仙台空港に行ってきました。クラスや学科によって違いますが,早いところで7時ごろ,遅いところでも9時台に伊丹空港に旅立ちました。朝の連ドラ「舞いあがれ」で飛行機がクローズアップされていますが,私も久々の空港。なんだか胸が躍る思いでした。3泊4日,金曜日に仙台に戻ります。1・3年生は考査です。正々堂々と戦ってください。

 

 自分の高校時代の修学旅行のことは,ほとんど覚えていませんが,教師となってからの修学旅行は一つ一つはっきりと覚えています。特に最初と最後の修学旅行は。

 

最初の修学旅行は担任として初めての引率でした。男子だけ44人の農業土木科と一緒に行った黒部山岳国立公園「雷鳥荘」標高2400m,ケーブルカーに乗り,終着駅から徒歩でも30分以上かかる陸の孤島でした。夕食まで自由時間2時間くらいあるから外出してもいいと言っても誰一人9月の気温一桁の山には出かけませんでした。愛知県豊田市の自動車工場を経由して,できたばかりの千葉浦安のTDLに。生徒はここぞとばかりに羽を伸ばし過ぎ,他校との衝突・迷子等スマホがない時代の教員用「ポケベル」はずっと鳴りっぱなしでした。最後は浅草で寄席。宮城県の田舎者が,漫談や紙切り芸等ステージ上でいいように使われて,笑い疲れ,帰り道は全員爆睡状態でした。5泊6日で学校に戻ったのは夕方の6時過ぎでしたが,ほとんどの家庭は迎えになど来ないので,宅配サービスなどない時代の当時は大きくて重いお土産を全身全霊で持ち上げ,生徒一人で帰路につきました。

 

最後の修学旅行は京都3泊4日の旅。USJ等を除けば今回の東高と同じような行程。ですから楽しみがなくなるので詳細は触れませんが,決定的に違うのは時期。9月のお彼岸の連休が終わると,次の日から修学旅行,帰ってきた次の日から新人戦なので朝練習の用具持参でした。自由時間のほとんどを練習にあてたのに新人戦はあえなく初戦敗退。もう一つ違うのは服装。当時の女子はスカート丈が短く,ルーズソックスという格好。でも蓮華王院の千手観音を普通の高校生は特に興味もなく駆け足で過ぎ去るところ,時間をオーバーしてじっくり見て,ガイドに鋭い質問をする姿に「格好を見ていて失礼ですが勉強等には興味関心がないものだと思いましたが,窺ったなら賢い学校なのだそうで」人は外見に寄らない?でもずいぶん元気の有り余る関西の方々に交流を迫られました。

 

 スマホがない。お土産の宅配サービスもない。もちろんどこに行っても「密」でマスクなどない修学旅行など,皆さんには想像すらできないかと思いますが,一生の思い出となることだけは20年,30年前も今回も変わりはありません。大いに楽しんできてください。

 

結びにお願いです。お土産のことです。全員に共通するお土産は必ず無事にご家族のもとに帰ってくることです。「ただいま」とご家族に言って旅行は終わります。Bon voyage. -修学旅行のしおり-より

令和4年11月29日 山内

62. W杯「歓喜」と「悲劇」~スポーツの魅力は「勝つこと」?「負けること」?それとも~

サッカーW杯E組で格上の独に逆転勝ちし,日本中が沸いています。にわかファン,勝った途端の手のひら返し,勝ち馬にのる,メディアもあおります。コロナ禍で明るい話題が少ないので無理もありませんが。27日(日)に次戦コスタリカ戦を迎えます。少なくともあと二戦以上残されています。

 

 サッカーの国際試合の劇的な勝敗には「○○の歓喜」「○○の奇跡」「○○の悲劇」といった表現が使われます。皆さんが生まれるずーっと前の昔話ですが,93年最終予選最終戦AT(当時はロスタイムと呼んでいた)で失点による終戦を詠んだカタール「ドーハの悲劇」,97年最終予選最終代表決定戦延長GG(当時は得点すれば試合終了の延長戦)はマレーシア「ジョホールバルの歓喜」と呼ばれています。96年アトランタ五輪で強豪ブラジルに勝利した「マイアミの奇跡」の例もあるので,今回の独戦の勝利は「ドーハの奇跡」とか「ドーハの歓喜」と呼ばれるのかもしれません。

 

 前回のW杯は2018年にロシアで開催されました。四年後の国際情勢を誰が予測できたでしょうか。四年前日本代表はグループリーグを突破し,当時世界ランク1位のベルギーと決勝トーナメント初戦で対戦し,後半途中まで2対0とリード,あと10分ほどのところで同点に追いつかれるも,懸命に守ってATに突入。延長戦まであと数秒というところでカウンターから失点し,悲願の世界8強まであと一歩のところで敗戦しました。この敗戦は「ロストフの悲劇」や「ロストフの激闘」と詠まれました。日本代表選手は「ベルギーが強かった」「自分たちに力がなかった」と素直に相手を称えました。皆さんも記憶に新しいかと思います。その時のメンバーで今大会出場は長友選手,酒井選手など数名だけです。ただ変わらないことが二つ。

 

 一つは指導者。当時コーチーだったのが,仙台でもプレー経験のある森保監督。彼は先述の「ドーハの悲劇」と「ロストフの激闘」を経験しています。負けを知って強くなっているだけに,浮ついた様子がいっさい見受けられませんでした。独をすばらしいチームと称えてました。日本代表に相応しい指導者です。

 

 もう一つ,四年前の露W杯で世界から賞賛されたのは日本チームと日本サポーターの試合後の整理整頓です。選手はロッカールームを去るときにゴミ一つ残さず,むしろ使用前以上にきれいにしていったそうです。

サポーターのスタジアム内外のゴミ拾い等の掃除も世界を驚かせました。世界は日本を「グッドルーザー」と呼びました。今回も日本サポーターの整理整頓の様子は世界中に発信されています。

 

 専門的なことは分かりませんが,独戦で決勝点を入れた日本の浅野選手が後半投入された直後,欧州屈指の強豪クラブで活躍する相手DFが浅野選手をバカにするような態度で戦っていました。私はこれを観て「勝負あり」と確信しました。勝った時に相手を尊敬する心。負けを知った者だからこそ『勝った時は謙虚に』『負けた時には潔く』行動できるかどうかです。代表選手たちには「バッドウィナー」でもいいなどと思わないで,四年に一度の祭典を楽しんで欲しいと思うのですが。

 

 今日は2年生保護者対象進路説明会が3階国文室で開催され,お忙しいところ,100を超える皆様にご来校いただきました。ありがとうございました。来週からは2年生が修学旅行,1・3年生が考査です。無事に実施できることを願っています。先生方が最も忙しい月がすぐそこまで迫っています。

 令和4年11月24日 山内